昨年の今ごろからつらかったなら、今年も限界が来るまで待つしかないのでしょうか。 早めに相談することの効果と限界を、研究結果から確かめます。
昨年の11月がつらかったなら
今はまだ大丈夫。それでも、心のどこかに不安があります。昨年も、最初は日が暮れるのが早くなったことが嫌なだけでした。やがて朝起きるのが難しくなり、人を避けるようになって、12月には出勤するだけで一日分の力を使い果たしていました。
そこで、こんな疑問が浮かびます。症状が重くなる前に相談を始めたら、今年の冬は変わるのでしょうか。
先に結論をまとめます。
- 早めに相談すれば季節性うつ病を予防できる、と断言できる根拠はまだ足りません。 症状のない時期に始めた心理療法を調べた研究は、ほとんどありません。
- 季節性うつ病に特化した認知行動療法(CBT-SAD)には、長期的な効果が見られました。 治療を受けてから2度目の冬には、光療法群より再発率が低くなりました。
- それでも、秋に相談する意味はあります。 予防を保証するためではなく、自分の初期サインと対処の順番を前もって決めるためです。
似たような話に見えますが、意味はそれぞれ異なります。研究でわかっていることと、まだわかっていないことを分けて見ていきましょう。
まず、「秋の落ち込み」と季節性うつ病は別です
日が短くなると気分が沈む、外出が減る。そうした変化があっても、すべてが季節性うつ病とは限りません。季節性うつ病とは、特定の季節にうつ病をくり返すパターンを指します。診断では通常、同じ季節にうつ病エピソードが 2年以上 くり返されているか、ほかの時期より季節性のエピソードが多いかなどを確認します。
冬型の季節性うつ病では、次のような変化が現れることがあります。
- ほぼ毎日続く気分の落ち込みや興味の低下
- 長く寝てもすっきりしない過眠
- 炭水化物が欲しくなり、食事量が増える変化
- 人を避け、家にこもりたくなる気持ち
- 集中力が落ち、日常生活に支障が出ること
数日気分が沈んだからといって、自分で診断する必要はありません。一方で、毎年似た時期にこうした変化が訪れるなら、日付とともに記録しておく価値があります。秋に外出できないほど無気力なときにできることは以前の記事で紹介しました。今回は、そこからもう一歩早い時期について考えます。
症状が出る前の相談を裏づける直接的な根拠は、まだ弱い
起こる時期を予測できるなら、前もって防げそうに思えます。ところが、この問いを直接検証した研究は驚くほど少ないのが現状です。
2019年のコクランレビューは、季節性うつ病の既往があり、その時点では症状のない人に心理療法をあらかじめ行った研究を調べました。基準を満たすランダム化比較試験は、46人が参加した1件だけ でした(Forneris et al., 2019)。
その研究では、春の時点でうつ症状のない参加者に、8週間のマインドフルネス認知療法(MBCT)を実施しました。次の冬にうつ病エピソードが現れた割合は、MBCT群で 65%、通常治療群で 74% でしたが、統計的に明確な差ではありませんでした(RR 0.88、95% CI 0.60–1.30)。研究規模が小さく、バイアスのリスクもあったため、エビデンスの確実性は非常に低いと評価されています(Fleer et al., 2014)。
この結果だけで「相談に予防効果はない」と結論づけることはできません。効果があるとも、ないとも言えないほど研究が小さかったからです。症状のない時期に始める相談に予防効果があるかは、まだ答えの出ていない問いです。
では、なぜCBT-SADの効果は次の冬にも続いたのでしょうか
もうひとつ、重要な研究があります。ただし、これは症状のない時期に相談を始める予防試験ではありません。季節性うつ病の症状があった成人 177人 が、冬に6週間の季節性うつ病向け認知行動療法(CBT-SAD)または光療法を受け、その後2度の冬にわたって追跡されました(Rohan et al., 2016)。
CBT-SADは週2回、全12回の集団療法として行われました。冬や暗さに対する自動思考を見直し、楽しさや達成感を得られる活動を予定に入れる行動活性化を練習し、次の季節に使う個別の再発予防計画を作りました。
治療後、最初の冬は2つの群に大きな差がありませんでした。違いが現れたのは 2度目の冬 です。
- うつ病の再発率:CBT-SAD 27.3%、光療法 45.6%
- うつ症状の得点:CBT-SAD群のほうが低い
- BDI-IIに基づく寛解率:CBT-SAD 68.3%、光療法 44.5%
光療法は、冬が来るたびに再開し、継続する必要があります。一方、相談で身につけた考え方への対処、活動の計画、初期サインへの気づきは、治療が終わったあとも使えます。研究者は、CBT-SADの長期的な効果を、こうした 持続的に使えるスキルと再発予防計画 によるものと考えました。
ただし、この数字を「秋に相談を始めると、再発率が18.3ポイント下がる」と解釈してはいけません。参加者はすでに症状がある冬に治療を受けており、比較対象も相談を受けなかった人ではなく、光療法を受けた人でした。この研究が示しているのは、適切に設計された季節性うつ病への相談の効果が、次の季節まで続く可能性がある ということです。
「早めに相談する」ときの現実的な目標
予防を「今年の冬は絶対に落ち込まないこと」と考えると、相談では約束できない結果を期待することになります。秋に相談する目標は、次のように置き換えられます。
1. 自分の季節パターンを記録で確かめる
昨年はいつから睡眠時間が増えたのか、約束を断り始めたのはいつか、最初に崩れた日常は何だったかを書き出してみてください。感情日記に睡眠時間・外出・気分を一緒に残すと、「天気のせいかな」という漠然とした感覚が、自分なりのパターンとして見えてきます。
2. 初期サインと危険サインを分ける
初期サインは、「朝のアラームを3回止める」「週末の約束が面倒になる」といった小さな変化です。危険サインは、出勤・食事・衛生管理などの日常生活が保てなくなることや、死にたいと考えることです。あらかじめ区別しておけば、小さな変化には無理のない計画で対処し、危険サインが出たときには、ためらわず専門家へ連絡できます。
3. 行動を先にカレンダーへ入れる
CBT-SADでは、冬に楽しさや達成感を得られる活動を意識的に計画します。「気分が良くなったら友人に会おう」ではなく、「毎週土曜日の昼に20分歩く」というように、具体的な予定にすることが役立ちます。意欲が落ちてからは、計画を立てること自体が難しくなるため、比較的調子のよい時期に決めておくほうが負担を減らせます。
4. 助けを求める順番を書いておく
最初に誰へ話すか、どの病院や相談機関へ連絡するか、予約が取れなければ次にどこを選ぶかを決めておきます。治療が必要なときに一から検索しなくて済むよう、連絡先と伝える言葉を一緒に書いておくと安心です。
「毎年11月になると睡眠時間が増え、日常生活に支障が出ます。今年も似た変化が始まったので、相談したいです」
相談だけで済ませないほうがよい場合もあります
季節性うつ病の予防研究で、もっとも直接的な根拠が多かったのは、相談ではなく ブプロピオンXL でした。3件のランダム化比較試験、計1,100人をまとめたコクランレビューでは、再発のリスク比は0.56でした。ただし、頭痛・不眠・吐き気のリスクが増え、再発リスクが高い人でも全員に利益があるわけではありませんでした(Gartlehner et al., 2019)。
光療法も広く使われていますが、症状が出る前に始めた場合の予防効果を示す根拠は限られています。目の病気がある人、光に敏感になる薬を服用している人、躁病・軽躁病の既往がある人は、自己判断で始めず、専門家に相談してください。
米国国立精神衛生研究所(NIMH)は、季節性うつ病の既往がある場合、普段症状が始まる季節より前に、治療を始める時期や方法を医療者へ相談できると案内しています。誰にでも同じ予防法を当てはめるのではなく、過去の治療への反応・本人の希望・副作用のリスクを踏まえて、個別の計画を立てること が大切です。
カウンセルネコで「秋の計画」を先に作る
病院や相談室へ行くほどの状態なのか、まだわからない。そんなときは、AI悩み相談アプリのカウンセルネコ(CounselCat) に昨年の秋と冬のことを話してみる方法があります。カウンセルネコが季節性うつ病を診断したり、予防したりするわけではありません。専門家に会う前に記憶を整理し、計画を言葉にするために使えます。
- 初期サインを書き出す:睡眠・食事・外出・人間関係のうち、最初に変わるものを3つ選びます。
- 対処の順番を決める:サインが1つ出たとき、1週間続いたとき、日常生活に支障が出たときに何をするか、それぞれ決めます。
- 専門家に伝える内容を準備する:相談や診察で伝え忘れたくないことを、ひとつの段落にまとめます。
登録不要・匿名で始められ、会話は端末内保存です。まだ確信の持てない気持ちも、気負わず言葉にできます。夜に不安が強くなるときは、深夜の不安についての記事で紹介した方法も一緒に試してみてください。
🤔 よくある質問
「毎年秋に落ち込むなら、季節性うつ病ですか?」
同じ季節にくり返すというだけでは、確定できません。症状の種類や期間、日常生活への影響、ほかの季節のうつ病エピソード、双極性障害の可能性などを合わせて確認する必要があります。毎年似た時期につらくなるなら、その記録を持って心療内科・精神科や心理相談の専門家に相談してみてください。
「まだ元気でも、相談を受けていいですか?」
はい。ただし、目標をはっきりさせておくことが大切です。「相談でうつ病を確実に防ぐ」よりも、「これまでのパターンを確認し、初期サインと助けを求める順番を決める」という目標のほうが、現在のエビデンスに合っています。
「光療法を早めに始めればよいですか?」
予防効果についての研究は、まだ限られています。光療法は季節性うつ病の治療に広く使われていますが、目の病気、服用している薬、双極性障害の既往によっては注意が必要です。始める時期や機器の使い方は、医療者へ相談するほうが安全です。
「カウンセルネコで予防できますか?」
カウンセルネコは医療機器でも治療でもなく、季節性うつ病の予防効果が検証されたサービスでもありません。変化の記録、相談の準備、行動計画など、早めに助けを求めるための準備 に活用できます。
こんなサインがあるなら、季節を待たないでください
気分の落ち込みや興味の低下が 2週間以上 ほぼ毎日続いている、または睡眠・食事・出勤・学業・人間関係が保てなくなっているなら、秋の計画だけで乗り切ろうとせず、専門家の助けを求めてください。
死にたい気持ちや自分を傷つけたい気持ちがあるなら、今すぐ助けを求めてください。日本では #いのちSOS(0120-061-338) を24時間利用できます。緊急時は 119または110 に連絡してください。カウンセルネコは緊急時の支援や危機対応を行うサービスではありません。
注意: AI相談は医療行為ではありません。診断・光療法・薬物治療が必要な場合は、必ず専門家に相談してください。
おわりに
早めに相談すれば、今年の冬の落ち込みを確実に防げると示した研究は、まだありません。だからといって、つらくなるまで待たなければならないわけでもありません。
季節性うつ病に特化した相談の持続効果は、ひとつの手がかりになります。次の冬に使うスキルと計画は、比較的調子のよい時期に準備できます。
昨年、最初に変わったことをひとつだけ、今日書いてみてください。睡眠だったのか、外出だったのか、人を避けたくなる気持ちだったのか。予防の最初の一歩は、季節をコントロールすることではなく、自分のサインに少し早く気づくこと なのかもしれません。
出典
- Fleer, J., Schroevers, M., Panjer, V., Geerts, E., & Meesters, Y. (2014). Mindfulness-based cognitive therapy for seasonal affective disorder: A pilot study. Journal of Affective Disorders, 168, 205–209.
- Forneris, C. A., Nussbaumer-Streit, B., Morgan, L. C., et al. (2019). Psychological therapies for preventing seasonal affective disorder. Cochrane Database of Systematic Reviews, 5, CD011270.
- Rohan, K. J., Meyerhoff, J., Ho, S. Y., Evans, M., Postolache, T. T., & Vacek, P. M. (2016). Outcomes one and two winters following cognitive-behavioral therapy or light therapy for seasonal affective disorder. American Journal of Psychiatry, 173(3), 244–251.
- Gartlehner, G., Nussbaumer-Streit, B., Gaynes, B. N., et al. (2019). Second-generation antidepressants for preventing seasonal affective disorder in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews, 3, CD011268.
- National Institute of Mental Health. (2023). Seasonal affective disorder. NIH Publication No. 23-MH-8138.